子供の時期に行う治療の目標は将来の成長を正常な軌道に乗せてあげることです。

小児期の患者様にはブラッシング指導、虫歯予防・虫歯治療、歯肉炎治療だけでなく、口の周りの筋肉や舌の使い方、食事指導も行っております。なるべく小さいうちに呼吸、咀嚼、嚥下など生命の基本となる機能を正しく身につけることで、正常な顎や顔面の発達を促すことに繋がり、歯並びの不正を予防することができます。

歯並びが悪く口腔容積が狭くなってしまうことによる気道の圧迫が起こると息苦しさから口呼吸になり、全身の姿勢の歪みや病気の原因になる可能性もあります。

必要な場合、矯正治療の一環としての咬合育成治療を行います。診断の上、年齢や骨格、機能に応じた装置を使用します。骨格のアンバランスに対するアプローチは成長期の限られた時期しか出来ないため、早めの診断が重要です。また正しい機能を身につけることはお子さんにとって生涯の財産になります。

主な治療法

◼︎MFT(筋機能療法)

歯は頬・唇の周りの(外側の)筋肉と舌(内側)の筋肉のバランスがとれた位置に並んでいるため、歯並びに問題がある子の多くで歯の外側と内側の筋肉の強弱のバランスがとれていない状態となっています。

口の周りの筋肉(舌、口輪筋、表情筋など)の様々なトレーニングを行い、正しい呼吸、咀嚼、嚥下の機能を獲得することで、顎の成長を正しい方向へ促します。

まだ生活習慣の改善がしやすいお子さんの場合、正しい筋肉の使い方を身につけることで歯並びが悪くならないように予防することも可能です。お口の周りの筋肉が正常に使われていない時にその機能を回復させたり、筋肉のバランスが偏っているのを改善することによって、歯並び自体が改善したり、矯正後の歯並びを正常に保つことにも役立ちます。MRC矯正装置(マウスピース型矯正装置)をMFTの一助として使用することがあります。

◼︎矯正治療

もう出てしまっている歯並びの不正に対して、セファロ分析や、模型の分析、現在の成長のタイミングの診断を行った上で必要であれば状態にあった装置を選択し使用します。お子さんの矯正に用いる装置には非常に多くのシステムや種類があります。この装置だけ入れておけば良いというような単純なものではありませんし、決して単一のシステムや装置で全てのケースを補える訳ではないので症例に応じた対応が必要です。

「なるべく小さい時に矯正を始めると大人になってから矯正する必要がない、抜歯の必要がない」などと聞くことがあるかもしれませんが、実際はどうなのでしょうか?

もちろん結果的にそうなるお子さんが沢山いらっしゃるのは事実ですが、基本的にこの時期の治療では、お顔を含めた顎の発達や歯並びを本来あるべき正常な成長の方向に可能な限り軌道修正することが治療の目標であり限界です。骨格のバランス次第ではむしろ今治療を開始しないほうが良いケースがあるのも事実です。元々明らかに歯が大きい場合や顎が遺伝的に大きすぎたり小さすぎたりする場合、成長のタイミングに合った治療の機会を逸してしまった場合では大人になってからの矯正治療が必要である場合もあります。成長のステージの中で必要なタイミングごとに治療の必要性を判断することが重要です。

筋機能に問題がある場合はMFT(筋機能療法)を併用して行います。

ムーシールド、MRC矯正治療(マウスピース型矯正装置)、床矯正装置、急速拡大装置、クワドヘリックス、リンガルアーチ、機能矯正装置他・・・など、一人一人に合わせた装置の選択もしくは、経過観察が必要です。